サンフレッチェ広島戦、3つの問題点

2008.07.24
 仕事が忙しく、更新が随分と滞ってしまったことをまずはお詫びしたい。
 快勝した山形戦などは、是非アップしようと思って内容を推敲していたのだが、結局アップできないままに次の試合を迎えてしまった。
 このような場末のサイトでも、ここ最近のアクセス数は普段と較べて多く、シーズン中盤の佳境を迎えたセレッソに対する注目度が、高まっていることを感じさせられた。
 そうした注目に対し、このサイトでは全然更新を行わないと言う怠慢をもって応えてきたわけだが、首位サンフレッチェ広島との対戦となれば、話は別である。
 出張から帰った日曜日、既に深夜だったにもかかわらずテレビの前にビール片手に座り、試合の行く末を注視していたわけだが・・・結果はあの体たらくである。
 セレッソのシュート7本に対し、広島のシュートは20。ここまで手も足も出なかった試合はいつ以来だと興味本位で調べてみたら、降格した2006年シーズンの第16節、鹿島戦以来である。(この時はシュート数8対22)
 最近の試合でこれに近い完敗を喫したのは、同じく広島と戦った第7節で、この時はセレッソのシュート8本に対して広島が19本。今回の試合と合計すると、セレッソのシュート15本に対し、広島のシュートは39本。セレッソが如何に、広島にボロカスにやられているか、如実に分かるデータである。
 どこがどう不味くてこのような結果になるのか。今回は試合を観た感想から、広島戦におけるセレッソの問題点を、大きく3つに分けて書いていくことにしたい。

両チームのフォーメーション

セレッソ大阪とサンフレッチェ広島のフォーメーション  この日のセレッソのフォーメーションは4-2-3-1。このフォーメーションは、4-4-2、4-3-3に続く、第3の基本フォーメーションとなりつつある。DFラインは、怪我と累積で離脱していたレギュラー陣が山形戦以降、ようやく復帰し、左から尾亦弘友希、江添建次郎、前田和哉、柳沢将之の4バックである。その前にアレーと青山隼のドイスボランチを置き、OHは左が香川真司、トップ下に濱田武、右が乾貴士。1トップは小松塁、GKは山本浩正。ボランチのレギュラーであるジェルマーノは依然、怪我で欠場である。
 一方のサンフレッチェ広島。基本布陣は前回の対戦時と変わらず、3-4-2-1の布陣。前回の対戦時から変わったメンバーは3名のみ。GKは前回の木寺に代って佐藤昭大(さとうあきひろ)、3バックは左から盛田剛平、森崎和幸、槙野智章、MFは左WB服部公太、ボランチが森崎浩司と青山敏弘、右WB李漢宰(リハンジェ)、トップ下が桑田慎一朗と柏木陽介、1トップが佐藤寿人。

セレッソの3つの問題点(1) マーキングの曖昧さ

 さて、この試合におけるセレッソの問題点を大きく分類すると、以下の3点になる。
  1. マーキングの曖昧さ(誰が誰を見るのか)
  2. 2列目の選手の守備能力
  3. 連携の未成熟な攻撃
 まずは1つ目の問題点、「マーキングの曖昧さ」について。
 前回の広島との対戦時も同じようなことを書いたが、4バックのセレッソと3バックの広島では、選手の初期配置が大きく異なる為、誰が誰を見るのか、どこで数的優位を作りやすく、どこで数的不利を作られやすいのかを意識して試合に臨む必要がある。
 前回の敗戦も、今回の敗戦も、基本的な問題点は共通しており、この「誰が誰を見るのか」と言う点が曖昧なまま、試合に臨んでしまったことが原因である。どのような点が曖昧だったのか、図を交えて見ていこう。
セレッソと広島のマーキングの関係  左の図は、この試合におけるセレッソと広島のマーキングの関係を示したものだ。セレッソのDFラインから順番に、この図を見ていくことにする。まず、相手の1トップである佐藤寿人は、CBの前田と江添で見る形になる。最終ラインでは数的優位を保つのが基本なので、これは自動的にそうなる。ただし、この図は基本配置状態でのマーキングを表したものなので、相手がサイドに流れたり、引いていったりした場合、SBやボランチへのマークの受け渡しは、適宜行うことになる。
 次に、広島の2人のトップ下は、ボランチのアレーと青山隼が見る。柏木と桑田は基本、中央でプレーするので、ボランチが見るのが妥当である。相手のWBは尾亦と柳沢の両SBが対応し、相手の両ボランチは香川と乾が見る。1トップの小松とトップ下の濱田は、守備時には相手のボランチのラインまで下がり、中央のスペースを埋める。
 ここまでは良いとして、問題は相手のCBが上がってきた時の対応である。広島はCBの攻撃参加を非常に重要視しているチームで、3バックに入った槙野、森崎和幸、盛田、そして(この日は欠場していたが)ストヤノフ、いずれも攻撃参加の意識が高い。前回の対戦時も、序盤はセレッソが押し込んでいたが、槙野がオーバーラップしてくるようになった時間帯からマーキングのズレが生まれ、徐々に劣勢に追い込まれた。
 今回は、そうしたCBのオーバーラップへの対策らしきものは施されており、槙野や盛田がボールを持って上がってきたときには、該当サイドのOH(左サイドなら香川、右サイドなら乾)が対応していた。しかし、OHが相手のCBのマークに付くと、今度は相手のボランチが空く。ボランチのマークは中央の濱田が受け取らなければならないのだが、ここでの受け渡しが曖昧で、OHが相手のCBのマークに出て行った際に相手のボランチが空き、CBからこのボランチにパスが出て、フリーでボールを持たれるシーンが頻出した。
 このようなことが起こると、後ろの選手は非常に困る。図を見れば分かるように、中盤より後ろの選手は各々見るべき相手が決まっているので、オープンになった相手ボランチに当たりに行こうとすると、自分が見ている相手がフリーになってしまう。結果、相手ボランチに対して当たりに行く人間がおらず、後ろはズルズル下がるだけの展開になる。
 以下、具体例として試合中に起こったシーンを見ていこう。

セレッソのマークの曖昧さが招いた、広島の決定的シーン

前半24分、槙野に当たりに行く香川  左の写真は前半24分のシーン。香川が上がってきた槙野のマークに入っているが、相手ボランチ、青山敏弘に対するマークを濱田が受け取っておらず、青山はフリーになっている。香川が槙野への距離を詰めた瞬間、槙野から空いた青山へパスが通り、フリーでボールを持った青山が前線の佐藤寿人へロングパス。佐藤のシュートは枠を外れたものの、セレッソのゴールが脅嚇されたシーンだった。
 続いて前半27分のシーン。このシーンでは、問題がより顕著に現れた。
前半27分、広島の攻撃のシーン  1枚目の写真、ここでは乾が槙野に対してプレッシャーに行っているが、その背後でやはり、青山敏がフリーになっている。このシーンでは、先ほどの24分のシーンよりも更に、濱田のポジションが相手ボランチから離れているが、これは濱田、小松が前からボールを奪いに行こうとしたためである。この試合を通じて、小松と濱田は守備の際、相手ボランチ付近に引き気味のポジションを取っていた。これはチームとしての約束事だったと思われるが、ここではそれを行わずに前から奪いに行き、逆に躱されてしまった。前から奪いに行って奪えなかったことで、乾の背後には大きなスペースが広がっている。
 そんな状況の中、青山敏がフリーで前を向いてボールを持った。こうなると、後ろの選手は手の施しようがない。既に書いたように、各々の選手が見るべき相手は決まっているので、自分が動いて青山敏に当たりに行くと、自分の見ている選手が空いてしまう。青山敏が顔を上げ、どこにでもパスを出せる状態でドリブルしている以上、ズルズルと下がるしかない。
 ここでセレッソの守備陣が採れる対応策は、大きく分けて3つ。
 1つ目は下がりながら、青山敏の最も近くにいる香川がプレッシャーに行くのを待つこと。しかし香川はチームの危機的状況など知らぬげに、ジョギング程度の戻りしかしておらず、この選択肢は潰えた。
 2つ目は、CBの位置で数的均衡になることを承知で江添が青山隼のマークを受け取り、マークをずらすことで青山隼が青山敏に当たりに行く。
 3つ目は、逆にDFラインを上げて前線の佐藤寿人をオフサイドポジションに追いやり、「いないこと」にしてしまうと言う対応。江添はこれを選択したが、セレッソがラインを止めるよりも一歩早く、青山敏から佐藤寿人へとパスが通り、佐藤がシュート、これを山本が止め、こぼれたボールを再度、佐藤がシュート、これがポストに跳ね返り、最後は桑田がシュートしてゴールかと思われたが、山本が飛び出していたことでこれがオフサイドの判定となり、セレッソは九死に一生を得た。
 ちなみにこのピンチの後、青山隼はレヴィー・クルピ監督に対して、「自分が付いたままでいいのか」と言うような確認をしていたが、これは相手のボランチがフリーになった時に、自分が相手のトップ下に付いたままの方が良いのか、それとも2つ目の選択肢のように、自身のマークを放してボランチに当たりに行った方が良いのかを確認していたものと思われる。
 ただ正直、そのような判断は監督に聞くまでもなく、選手同士で話し合って結論を下して欲しいところだ。監督はボールから何十メートルも離れたところから試合を観ているわけで、現場の「空気感」は、戦っている選手たちが最も正確に感じているはずだからだ。
 少し長くなったので、1つ目の問題点、「マーキングの曖昧さ」について纏めておこう。
  • OHの敵ボランチに対するマークの受け渡しが徹底できていなかった。
  • 従って、特に敵CBが上がってきた際、OHがそちらに引っ張られて、敵ボランチがフリーになるシーンが多かった。
  • 彼我の布陣の構造上、OHがマークを外されると、後ろの選手が敵ボランチを押さえに行く事が難しかった。
  • よって、前を向いた敵ボランチから、自由にパス出しを許すことになった

セレッソの3つの問題点(2) 2列目の選手の守備能力

セレッソのOHの守備能力の不足を表すシーン  2つ目の問題点、これはそもそも論になるが、セレッソの2列目の選手、特に両サイドに入った香川と乾の守備の個人能力が低かった点も、セレッソの守備の構築を難しくしていた要因である。
 左の写真、1枚目は前半23分、香川が槙野にドリブルで突破されそうになり、ファウルで倒してしまったシーン。
 2枚目は前半25分、盛田に寄せた乾が躱されたシーン。
 そして3枚目は前半33分、尾亦と乾の間を、槙野にドリブルで抜かれたシーンである。
 上述したように、セレッソのOHは広島のボランチ、及びCBと相対する場面が多かったわけだが、決して攻撃のスペシャリストとは言えないポジションの選手に対して、香川、乾が守備で後れを取るシーンが何度もあった。
 特に香川は能力以前に守備意識自体が低く、自分のエリアに入ってきたボールに対して、準備が出来ていないシーンが目に付いた。
 下の写真は後半10分、セレッソが佐藤寿人のシュートで同点に追いつかれる直前のシーンである。(後半のシーンであるため、広島は左から右に攻めている)
後半10分、香川の守備の問題点  1枚目の写真、センターサークル中央付近にポジションを取っているのが香川である。相手CBに対して小松がワンサイドカットを行っているにもかかわらず、香川はカバーリングの意識が低く、後ろ向きでボールを受けようとしている目の前の相手選手に対して、大きく間合いを空けてポジションを取っている。そして2枚目の写真、香川はボールを受けた相手選手に対し、セレッソから見て左サイドへのパスコースを切る動きを見せているが、これが不十分で、サイドに大きく張り出した槙野へのパスを許してしまった。フリーでボールを受けた槙野はサイドを持ち上がって佐藤寿人にパスを送り、そこから失点となった。
 香川はサボるような選手ではないので、恐らく精神的、肉体的に磨耗しているのだろう。そうした中、守備よりも攻撃に意識を割きたい気持ちも理解できる。しかし、そうしたやり方が通用するのは格下か、せいぜい同等の相手までである。格上の相手に対しては、全ての選手が高い守備意識で臨まなければ、失点を防ぐことは出来ない。そしてJ1に上がれば、この日のような、格上の相手との戦いが待っているのである。

セレッソの3つの問題点(3) 連携の未成熟な攻撃

 1つ目、2つ目の問題点は守備に関するものだったが、3つ目は攻撃に関する問題点である。
 後半22分、1-2とビハインドを背負ったセレッソは、ボランチの青山隼に代えてFW古橋を投入。濱田をボランチに回し、4-4-2の布陣に移行した。
 1トップから2トップとなり、広島の3枚のCBに対して2枚のFWで前線から守備を行えるようになったことで、これまでのようにCBの上がりからマークのズレが生まれるシーンが少なくなり、広島の選手たちの足が止まりだしたことも手伝って、セレッソの守備は幾分持ち直した。
 この時間以降はセレッソの時間帯となり、ビハインドが1点のみだったことを考えると、同点に持ち込む可能性も十分にあったわけだが、セレッソはこの時間帯を活かすことが出来なかった。
 その原因は、選手同士の連携や、意思疎通の問題である。
 後半29分、香川のパスが古橋に合わず、ボールを失ったシーンを始めとして、同34分の濱田から乾へのパス、同44分の乾から小松へのパス、いずれも出し手と受け手の呼吸が合わず、セレッソは同点に追いつくべき大事な時間帯で、自分たちの意思疎通の齟齬からボールを失っている。
 広島の選手たちが、総じて高い相互理解を保ち、出し手と受け手がシンクロしたパス交換を見せていたのに対し、セレッソの選手たちはまだまだ、お互いの考えを理解するには至っていない。
 古橋は怪我明け、乾は加入したばかり、途中出場した新外国人のカイオに至ってはこの試合がセレッソにおけるデビュー戦であることを考えると、致し方の無い気もする。この点に関しては、試合の無い次週に行われる、和歌山県上富田でのキャンプにおいて、連携を高めていく必要があるだろう。

総評

 この試合で決まった3つのゴールは、いずれも素晴らしいものだった。
 先制点を決めた小松のゴールは、サイドに開いた、角度の無い位置から蹴りこんだもの。広島のウィークポイントである、3バックの脇のスペースから得点する能力を小松が有していることを、相手に見せ付けたゴールだった。
 一方の広島の2ゴールも強烈だった。1得点目は佐藤寿人が、ペナルティエリア外からゴール。前田と江添の間を抜き、GK山本の伸ばした手の外を巻くようなシュートだった。
 そして、2得点目はボールを奪った柏木がそのままドリブルで持ち込み、ゴール手前20m程の位置から、漫画のようなドライブシュート。これも圧巻のゴールだった。
 これら3つのゴールに象徴されるように、この試合はセレッソと広島、J2に在りながらA代表のアタッカーを輩出しているチーム同士の対戦に相応しい、攻撃的でスリリングな試合だったが、既に書いてきたように、内容では明らかに広島が上回った試合だった。
 セレッソが広島と対戦する機会はあと一回。J2のレベルを明らかに超えたこのチームとの対戦は、J1を目指すセレッソが、J1を戦う資格を有するかどうか、その試金石ともなる試合である。
 「追試」の機会は、あと一回。