横浜FC戦、拙守拙攻の改善策

2008.08.07
 2週間空いたし、コンディションは整っているはず。和歌山で合宿して、連携も高まったはず。だから横浜FCには勝てるはず。カズを見れるのがちょっと楽しみ。
 そんな甘い考えで試合を観に行ったら、待っていたのは情けない敗北だった。
 スコアだけを見れば1-2の惜敗で、最後は一方的に攻め立てもした。しかし、「合宿の成果」や「コンディションの回復」、「連携の向上」と言った、この先上昇気流に乗っていけそうな要素は、試合を通じて、ついぞ見られなかった。そして何より、前回横浜FCと対戦したときよりも、セレッソのサッカーの内容は悪くなっていた。

両チームのフォーメーション

両チームのフォーメーション  試合内容に触れる前に、まずこの試合での両チームのフォーメーションを見ておこう。
 セレッソは広島戦と同じく、4-2-3-1の布陣。
 GK山本浩正、DFラインは左から尾亦弘友希、江添建次郎、前田和哉、柳沢将之、ドイスボランチがアレーと怪我から復帰したジェルマーノ、3人のOHは左から古橋達弥、濱田武、乾貴士、1トップに小松塁。
 一方の横浜FCは4-4-2。
 GK小山健二、DFラインは左から、太田宏介、吉本岳史、エリゼウ、中田洋介、ボランチが八角剛史、根占真伍、OHは、右が一昨年までセレッソに在籍していた山田卓也、左が三浦淳宏、2トップはアンデルソンと池元友樹。率いるのは昨シーズン序盤までセレッソを率いていた、都並敏史監督である。

前回の対戦との比較

 まずは、前回の横浜FCと対戦した際のサッカーの内容と、今回のサッカーの内容を比較するところから、試合の分析を始めることにしたい。
J2 第9節(2008年4月26日)
セレッソ大阪チーム横浜FC
前半43分 小松得点
(1-1)
前半34分 根占
8シュート11
8CK5
21FK20
J2 第29節(2008年8月3日)
セレッソ大阪チーム横浜FC
後半41分 小松得点
(1-2)
前半32分 池元
後半26分 池元
14シュート12
8CK3
17FK14
第9節
第9節シュート分布
第29節
第29節シュート分布
 左の表は、この2つの試合における両チームのスタッツである。
 両チームのシュート数に着目してみよう。セレッソの被シュート数は前回と今回でそれぞれ11本、12本と横ばい、それに対してシュート数は前回の8本から14本と、大きく本数を伸ばしている。
 これだけを見ると、セレッソのサッカーは向上しているようにも見える。しかし、問題は放ったシュート、打たれたシュートの内容である。
 表の下にあるのは、それぞれの試合でシュートが放たれた地点を記したものである。ピンクのマークがセレッソ、ブルーのマークが横浜FCのシュートを表している。マークにはシュートを打った時間帯も併記しているが、この文字がブルーのものが枠内シュート、オレンジのものがゴールになったシュートである。また、フリーキックから直接ゴールを狙ったシュートにはFK、コーナーキックから味方の選手が合わせたシュートにはCKを付記した。
 この図を見ると、印象は大きく変わる。前回の対戦時、セレッソの枠内シュートは(ゴールしたものも含め)4本である。今回は3本。そのうち2本はFKである。
 また、ペナルティエリア内から放たれたシュートは前回が4本、今回が3本。3本のうちの2本はCKからのシュートである。
 従って、セットプレーを除けば、今回の試合でセレッソが枠内に飛ばしたシュートは、ゴールとなった小松のヘディングシュート1本のみである。また、ペナルティエリア内に侵入してシュートを放ったのも、このシュートが最初で最後である。
 それ以外の殆どのシュートは、ペナルティエリア外から放たれた枠外シュートで、横浜FCのゴールマウスを脅かすには至っていない。前回の対戦時のシュートが、全て流れの中から放たれたものであること、枠内シュートの数、ペナルティエリア内からのシュートの数が共に今回よりも多いことを考えると、シュート数が増えたとは言え、セレッソの攻撃力は低下したと言わざるを得ない。
 一方、打たれたシュートの方に着目すると、こちらはセレッソ側のシュートとは全く逆の傾向を示していることがわかる。
 前回の枠内シュートの数は6本。その半数が、三浦淳のFKによるものである。しかし、今回の試合における枠内シュートは、全て流れの中から放たれたもの。また、シュートを放った地点の分布も、前回の分布と較べて、著しくゴールに近づいている。
 従って、セレッソは守備力においても、前回の対戦時からレベルが低下した、と言うことになる。
 結論付けると、2週間のインターバルを空け、合宿をし、ホームで万全の状態で迎えた試合で、セレッソは前回を上回るパフォーマンスを見せることが出来なかったということだ。メンバーを見ても、前回と今回で殆ど遜色はなく(前回は香川がいたが、古橋と尾亦はいなかった)、チーム全体のパフォーマンスが落ちていると言わざるを得ない。
 以降では、攻撃と守備に分けて、セレッソの問題点を考えていくことにしたい。

攻撃面の問題点、誰が得点を奪うのか

 「小松以外に点を取る人間がいない」
 これが、現在のセレッソの攻撃の最大の問題点である。
 ここ最近の5試合、小松以外の選手で得点を記録したのは、25節のモンテディオ山形戦でゴールした乾のみ。最近10試合まで遡っても、小松以外の得点者は、森島康、ジェルマーノ、香川、羽田が各1点ずつ取っているだけである。
 「セレッソは攻撃的」といくら言ってみたところで、ゴールするためにはボールを相手のゴールマウスの中に蹴りこむ人間が必要になる。そうした人間が小松以外にいないことは、上で挙げたセレッソのシュートの分布図から見ても明らかである。
 森島康、カレカと言ったセンターFWが移籍で去り、カイオはまだチームにフィットしておらず、濱田、乾はどちらかと言うとチャンスメーカー。そして、小松に次ぐ得点源として最大の期待を背負っていた古橋は、この試合の前半30分に肉離れを起こし、3週間の離脱。このような状況の中、セレッソは新しい得点源を確保する必要がある。

守備の問題点、センターバックの過負荷

 一方、守備面ではCBである江添と前田に対する過度の負担が問題点である。
 セレッソの守備がCBの個人能力に大きく依拠していることは、レギュラーであるこの2人が抜けた、熊本戦の試合内容を見ても明らかである。
 2人が揃っている時は、相手に対してそうそう後れを取ることはないが、この日のように、J2得点ランキング2位のアンデルソン、2試合で3得点中の池元と言った強力な2トップを相手にすると、2対2の状況では、やはり苦しくなる。どのようにして、DFラインで相手に対して数的優位を保つのか。この点が、セレッソの守備を維持する上での要諦となる。
 先々の試合における解決案は後から述べるとして、この試合に限って言うと、左SBの尾亦のポジション取りに、非常に問題があった。
尾亦のポジショニング  左の写真は上からそれぞれ、前半19分にセレッソから見て右サイドからクロスが上がったシーン、前半32分の失点シーン、後半26分の失点シーンである。(3枚目の写真は後半のため、セレッソゴールは右側である。)
 いずれの写真でも、尾亦は自分から見て逆サイドにボールがある状況で、中央に絞る動きを見せていない。4バックのチームが2トップのチームと対戦する場合、サイドにボールがある状況でボールと逆サイドにいるSBが中央に絞らないと、CBの位置では相手の2トップに対して数的同数になってしまう。
 先に言っておくと、この中央に絞る作業はSBにとっては非常に負担の大きい仕事である。SBが本来見る相手は該当サイドの相手サイドハーフなので、絞った後で相手にサイドチェンジされると、もう一度前に出て行ってプレッシャーをかけることになるからである。このエリアの出入りは運動量やバランス感覚が求められる為、ともすればサボりがちで、写真を見ても分かるとおり、尾亦は明らかに中央に絞る動きを怠っている。1失点目は、太田からピンポイントで上がったクロスが素晴らしかったこと、利き足(左足)と逆の脚で決めた池元のシュートが完璧だったことを考えると、致し方のない面もあるが、2失点目(3枚目の写真でボールを持っているアンデルソンから池元にパスが出て失点)は明らかに、尾亦が絞る動きを怠ったことが原因である。
 繰り返しになるが、並みの相手であればそれでもなんとかなる。数的同数の状態でもCBが跳ね返してくれるからである。しかし、そのようにことが運ばない相手と対戦した時には、サボった分のツケはきっちりと返ってくることになる。

4-3-3への回帰

 さて、ここまでに挙げたセレッソの修正点を大まかにまとめると、攻撃面においては小松に次ぐ得点源の確保、守備面においてはCBの位置での数的優位の維持、これが要件である。
 両方の要件を解決する糸口として、まずは羽田をスタメンに戻し、基本布陣を4-3-3に戻すべきである。
 攻撃面での要件、「小松に次ぐ得点源の確保」について考えた場合、セレッソで小松の次に得点を取っているジェルマーノを、もっと前目でプレーさせる必要がある。アレーについても同様で、ボールを持って仕掛けるプレースタイルを活かすためにも、もっとリスクチャレンジできるエリアでプレーさせるべきである。彼らの背後に、守備の負担を引き受ける選手(羽田が最も適任だが、青山、藤本でもいいだろう)を入れ、ジェルマーノ、アレーはもう少し前目でプレーさせる。
 また一方、守備面において、DFラインでの数的優位を維持する為にも、ラインの前でフォアリベロとして振舞う選手が必要である。この試合では、セレッソのDFが相手のアタッカーに対して一本のDFラインで対応せざるを得ず、それが最終的に失点にも繋がった。DFラインの前に人を置き、ライン+1で厚みを持って守備を行えるようにする必要がある。
フォアリベロを入れた守備  左の写真は前回の対戦時の前半40分、セレッソがカウンターを食らったシーンである。
 (セレッソゴールは右側である。)
 DFラインの前に入った羽田が、DFラインと自分とで、相手の攻撃者を挟み込むようにして守備を行っていることがわかる。このシーンでは、江添が下がってきた羽田にボールを落とし、マイボールとした。DFラインだけで守っていては、できない守り方である。
 また、この写真では左SBに入った丹羽(写真の一番下)が、センターサークル付近まで絞って江添の背後のスペースをカバーしており、3+1で守る形が出来ていることも注目点である。

まとめ − 拙守拙攻の改善策

 さて、改善策をまとめたい。
  1. 基本布陣
    • フォーメーションを4-3-3とし、DFラインの前にフォアリベロを置く。
  2. 攻撃の修正点
    • アレーとジェルマーノの背後でフォアリベロが守備的に振舞うことで、彼らが前目のポジションを取れるようにする。
    • ジェルマーノの攻撃参加の機会を増やすことで、小松以外の得点源を確保する。
  3. 守備の修正点
    • DFラインとフォアリベロで2列を為し、厚みを持って守備を行う。
    • ボールと逆サイドのSBは中央に絞り、相手に対して数的優位を確保する。
    • CB2枚、絞ったSB、その前にフォアリベロ、この3+1の状態で守る。
 次の湘南ベルマーレとの対戦は、非常に注目である。
 レヴィー・クルピ監督は布陣の変更に踏み切るのか。それとも、現在の4-2-3-1のまま、柿谷や乾、カイオの覚醒を待つのか。また、前回はアジエルに対して羽田をマンマークにつけたが、今回はどうするのか。
 個人的には、布陣については既に述べたように4-3-3に戻すべきであると考えている。また、マンマークは止めたほうがいいとも思っている。同じ相手に2度通用する作戦とは思えないからだ。
 何にせよ、次節は正念場である。